2007年 01月 24日
「むかつく」という気持ち |
*文章中に登場するすべての事例は、個人情報保護の関係で実在の人物そのものではありませんが、著者が取材した多くの人々からヒントを得て新たに創作したものです。
教育シリーズ 第43回
佐竹 真次
「むかつく」という若者ことばは、50代の私には大変わかりにくいことばです。
立川昭二氏によれば、怒りを表現することばとして、10代ならば「むかつく」、30、40代ならば「頭にくる」、60代以上になると「腹がたつ」を用いるそうです。
「腹がたつ」は、怒りがいったんおなかに入ります。
そこにたまってむしゃくしゃするのです。
「頭にくる」は、怒りがいったん頭まできます。
そこでカチンとくるのです。
ところが、「むかつく」は、どんな感じで怒っているのか、氏にはわからないのだそうです。
おなかや頭までくれば、留まる時間も長くなります。
そのため、怒りを検討したり相手と口喧嘩をしたりする余裕があったのです。
ところが、「むかつく」は、からだの名称が入っておらず、怒りがおなかにも頭にもきません。
からだの前で弾いてしまうのです。
つまり、怒りがからだの中に入る前に「キレて」おり、「瞬間の吐き気」だけで終わってしまうのです。
そのため「キレる」行動様式になりやすいのではないか、と立川氏は言います。
内臓感覚としての情動体験が、状況に適応するための推論と意思決定の基礎になっているという、ダマシオのソマティック・マーカー仮説を思い起こさせます。
なぜそのようになってしまったのでしょうか。
競争社会のスピード化によっていちいち自分の情動体験を味わっている暇がなくなった、過剰な便利さによってフラストレーションを体験する必要性が減少した、テレビゲーム的な仮想現実空間の中で思い通りに対象を操作することに慣れすぎた、家族が忙しすぎるために互いの気持ちを聴き合って言語化する機会が減少した、などが考えられます。
結果として、怒りそのものとその原因と解決法を十分に検討しないままに衝動的に反応してしまう若者を見て、大人は困惑するのです。
対策は2つ考えられます。
1つは、大人が時間を惜しまずに子どもの「むかつく」気持ちをよく聴き、ことばとからだでそれを味わう習慣を作ってあげることです。
2つ目は、神のことばを聞き、神の判断に委ねる習慣に導くことです。
「愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい。
それは、こう書いてあるからです。
『復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする、と主は言われる。』」(ローマ12:19)
引用文献
立川昭二「からだことば」早川書房 2000
ダマシオ(田中三彦訳)「生存する脳:心と脳と身体の神秘」講談社 2000
教育シリーズ 第43回
佐竹 真次
「むかつく」という若者ことばは、50代の私には大変わかりにくいことばです。
立川昭二氏によれば、怒りを表現することばとして、10代ならば「むかつく」、30、40代ならば「頭にくる」、60代以上になると「腹がたつ」を用いるそうです。
「腹がたつ」は、怒りがいったんおなかに入ります。
そこにたまってむしゃくしゃするのです。
「頭にくる」は、怒りがいったん頭まできます。
そこでカチンとくるのです。
ところが、「むかつく」は、どんな感じで怒っているのか、氏にはわからないのだそうです。
おなかや頭までくれば、留まる時間も長くなります。
そのため、怒りを検討したり相手と口喧嘩をしたりする余裕があったのです。
ところが、「むかつく」は、からだの名称が入っておらず、怒りがおなかにも頭にもきません。
からだの前で弾いてしまうのです。
つまり、怒りがからだの中に入る前に「キレて」おり、「瞬間の吐き気」だけで終わってしまうのです。
そのため「キレる」行動様式になりやすいのではないか、と立川氏は言います。
内臓感覚としての情動体験が、状況に適応するための推論と意思決定の基礎になっているという、ダマシオのソマティック・マーカー仮説を思い起こさせます。
なぜそのようになってしまったのでしょうか。
競争社会のスピード化によっていちいち自分の情動体験を味わっている暇がなくなった、過剰な便利さによってフラストレーションを体験する必要性が減少した、テレビゲーム的な仮想現実空間の中で思い通りに対象を操作することに慣れすぎた、家族が忙しすぎるために互いの気持ちを聴き合って言語化する機会が減少した、などが考えられます。
結果として、怒りそのものとその原因と解決法を十分に検討しないままに衝動的に反応してしまう若者を見て、大人は困惑するのです。
対策は2つ考えられます。
1つは、大人が時間を惜しまずに子どもの「むかつく」気持ちをよく聴き、ことばとからだでそれを味わう習慣を作ってあげることです。
2つ目は、神のことばを聞き、神の判断に委ねる習慣に導くことです。
「愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい。
それは、こう書いてあるからです。
『復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする、と主は言われる。』」(ローマ12:19)
引用文献
立川昭二「からだことば」早川書房 2000
ダマシオ(田中三彦訳)「生存する脳:心と脳と身体の神秘」講談社 2000
by ybible63
| 2007-01-24 09:16
| ★教育シリーズ(子育て)