2006年 04月 13日
教育シリーズ 第25回 |
*文章中に登場するすべての事例は、個人情報保護の関係で実在の人物そのものではありませんが、著者が取材した多くの人々からヒントを得て新たに創作したものです。
10秒間待ってみよう 佐竹 真次
親御さんや先生から「知的障害をもつ子どもや自閉傾向をもつ子どもなど、発達に遅れのある子どもたちに話しことばを教えるよい方法がありませんか」と聞かれることがよくあります。
とくに、ことばの面で発達に遅れのある子どもたちを効果的に支援する方法の一つに「機会利用型指導法」(文献)といわれるものがあります。
これは音声模倣ができる段階にある子どもたちに自発的な話しことばを育むために、アメリカで考案された方法です。
この指導法では、ことばが出現しやすい状況(機会)をうまく準備し、それらをフルに活用します。
「機会利用型指導法」は、以下のような手続きを基本としています。
なお、説明の便宜上、指導の目標とする話しことばの例を、要求のことばである「だっこ」と仮定しますが、いうまでもなく、場面の設定のしかたによって他の種類の話しことばをねらうこともできます。
① 子どもが安心感や興味をもって「だっこ」と言えるような環境条件を整えます。たとえば、子どもを数回抱っこし「高い高い」をしてあげたりして動機を高めておきます。
② 子どもが「だっこ」と言って要求してくるのを待ちます。これを「時間遅延」といいます。たとえば、5~10秒間注意深く待ってみます。子どもが大人に接近してこなければまだ動機づけが弱いのです。子どもが興味を持つように活動をもっと工夫しましょう。
③ 5~10秒間待っているうちに、子どもが明らかに抱っこをしてもらいたくて接近はしてきても「だっこ」と言わないならば、大人は子どもに「何ていうの?」などと言って必要最小限のきっかけを与えます。これを「プロンプト(促進)」といいます。
④ それでも「だっこ」と言わない場合には、大人が「だっこ」と言って必要最小限のお手本を示します。これを「モデル提示」といいます。
⑤ 「だっこ」(小さい子どもでは「だー」でも「っこ」でもよい)と言えた場合には、すぐに子どもを抱っこしていっぱい遊んであげます。このように子どもの望みをかなえることを「賞賛」または「強化」といいます。
実はこの手続きは、赤ちゃんの反応にお母さんが応じるときのやり方とよく似ています。
また、③で述べた「プロンプト」を「何ていうの?」の替わりに「うなずき」「微笑み」「温かく視線を合わせること」などにし、④で述べた「モデル提示」の替わりに「それは~ということなんですね」といったことばで「理解」や「確認」をし、⑤で述べた「賞賛」の替わりに「共感」をすれば、大人同士のコミュニケーションをも非常に円滑にすることができます。
さらに、②で述べた「時間遅延」は「待つこと」を忘れた現代の日本人にとって、とりわけ大切な手続きです。
相手が反応しようかどうかと躊躇しているときに、あるいは、相手がどう応答しようかと思案しているときに、実際に5~10秒間注意深く待ってみてください。その時間は予想以上に長く感じるものです。
ところで、聖書は私たちに対する神様の救いと祝福の約束が書かれた書物ですから、その約束をことさら忍耐して待つことの重要性が強調されています。「もしまだ見ていないものを望んでいるのなら、私たちは、忍耐をもって熱心に待ちます。」(ローマ8:25)とも、「あなたがたが神のみこころを行なって、約束のものを手に入れるために必要なのは忍耐です。」(ヘブル10:36)とも書かれています。
他者のよき反応を期待しつつ待つときの、私たちの姿勢に共通するものを感じますね。
文献
長崎勤・佐竹真次・宮崎眞・関戸英紀(1998):スクリプトによるコミュニケー
ション指導-障害児との豊かなかかわりづくりをめざして-.川島書店.
10秒間待ってみよう 佐竹 真次
親御さんや先生から「知的障害をもつ子どもや自閉傾向をもつ子どもなど、発達に遅れのある子どもたちに話しことばを教えるよい方法がありませんか」と聞かれることがよくあります。
とくに、ことばの面で発達に遅れのある子どもたちを効果的に支援する方法の一つに「機会利用型指導法」(文献)といわれるものがあります。
これは音声模倣ができる段階にある子どもたちに自発的な話しことばを育むために、アメリカで考案された方法です。
この指導法では、ことばが出現しやすい状況(機会)をうまく準備し、それらをフルに活用します。
「機会利用型指導法」は、以下のような手続きを基本としています。
なお、説明の便宜上、指導の目標とする話しことばの例を、要求のことばである「だっこ」と仮定しますが、いうまでもなく、場面の設定のしかたによって他の種類の話しことばをねらうこともできます。
① 子どもが安心感や興味をもって「だっこ」と言えるような環境条件を整えます。たとえば、子どもを数回抱っこし「高い高い」をしてあげたりして動機を高めておきます。
② 子どもが「だっこ」と言って要求してくるのを待ちます。これを「時間遅延」といいます。たとえば、5~10秒間注意深く待ってみます。子どもが大人に接近してこなければまだ動機づけが弱いのです。子どもが興味を持つように活動をもっと工夫しましょう。
③ 5~10秒間待っているうちに、子どもが明らかに抱っこをしてもらいたくて接近はしてきても「だっこ」と言わないならば、大人は子どもに「何ていうの?」などと言って必要最小限のきっかけを与えます。これを「プロンプト(促進)」といいます。
④ それでも「だっこ」と言わない場合には、大人が「だっこ」と言って必要最小限のお手本を示します。これを「モデル提示」といいます。
⑤ 「だっこ」(小さい子どもでは「だー」でも「っこ」でもよい)と言えた場合には、すぐに子どもを抱っこしていっぱい遊んであげます。このように子どもの望みをかなえることを「賞賛」または「強化」といいます。
実はこの手続きは、赤ちゃんの反応にお母さんが応じるときのやり方とよく似ています。
また、③で述べた「プロンプト」を「何ていうの?」の替わりに「うなずき」「微笑み」「温かく視線を合わせること」などにし、④で述べた「モデル提示」の替わりに「それは~ということなんですね」といったことばで「理解」や「確認」をし、⑤で述べた「賞賛」の替わりに「共感」をすれば、大人同士のコミュニケーションをも非常に円滑にすることができます。
さらに、②で述べた「時間遅延」は「待つこと」を忘れた現代の日本人にとって、とりわけ大切な手続きです。
相手が反応しようかどうかと躊躇しているときに、あるいは、相手がどう応答しようかと思案しているときに、実際に5~10秒間注意深く待ってみてください。その時間は予想以上に長く感じるものです。
ところで、聖書は私たちに対する神様の救いと祝福の約束が書かれた書物ですから、その約束をことさら忍耐して待つことの重要性が強調されています。「もしまだ見ていないものを望んでいるのなら、私たちは、忍耐をもって熱心に待ちます。」(ローマ8:25)とも、「あなたがたが神のみこころを行なって、約束のものを手に入れるために必要なのは忍耐です。」(ヘブル10:36)とも書かれています。
他者のよき反応を期待しつつ待つときの、私たちの姿勢に共通するものを感じますね。
文献
長崎勤・佐竹真次・宮崎眞・関戸英紀(1998):スクリプトによるコミュニケー
ション指導-障害児との豊かなかかわりづくりをめざして-.川島書店.
by ybible63
| 2006-04-13 09:35
| ★教育シリーズ(子育て)